MEMORY-君と過ごした夏-





『蒼太』


その名前を聞いた途端、自分の身体がピクリと震えるのがわかった。


ここで…蒼太の名前を出さないでほしい。

今、一番聞きたくない名前だもの。



「今日は…蒼太の命日じゃないか…!」


プチン、と。

私の中で、何かが切れる音がして。


気づいたら私は、優也の頬を力の限り叩いていた。


「アンタに…蒼太の何がわかるのよ」

「奈…央」


「蒼太の命日だなんて知ってるわよ、そんなこと

…知ってても…どうしろって言うのよ?」


身体が震える。

どうしようもない怒りが湧いてくる。


「蒼太のお墓になんて…行けない

どの面さげて行けって?ふざけないで

他の男のところに行くな?蒼太が悲しむ?


アンタが蒼太の何を知ってそんなこと言ってんの…?!


蒼太はもう、死んだの…死んだのよ!

アンタなんかが…蒼太のこと、知ったかぶらないでよ!!」





< 8 / 237 >

この作品をシェア

pagetop