MEMORY-君と過ごした夏-
『蒼太』
その名前を聞いた途端、自分の身体がピクリと震えるのがわかった。
ここで…蒼太の名前を出さないでほしい。
今、一番聞きたくない名前だもの。
「今日は…蒼太の命日じゃないか…!」
プチン、と。
私の中で、何かが切れる音がして。
気づいたら私は、優也の頬を力の限り叩いていた。
「アンタに…蒼太の何がわかるのよ」
「奈…央」
「蒼太の命日だなんて知ってるわよ、そんなこと
…知ってても…どうしろって言うのよ?」
身体が震える。
どうしようもない怒りが湧いてくる。
「蒼太のお墓になんて…行けない
どの面さげて行けって?ふざけないで
他の男のところに行くな?蒼太が悲しむ?
アンタが蒼太の何を知ってそんなこと言ってんの…?!
蒼太はもう、死んだの…死んだのよ!
アンタなんかが…蒼太のこと、知ったかぶらないでよ!!」