MEMORY-君と過ごした夏-
――キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
榎本は「んあー」なんてだらしない声を上げると、少しだけ残念そうに私の方を見た。
「今日はひとまず戻らないと」
「…そう」
別にいい。
だって元々榎本はサボったりするタイプには見えない。
でも少しだけ、本当に少しだけ、がっかりした…気もする。
「今度サボるときは俺も誘ってね」
「…考えとく」
実は明日もサボろうと思ってたんだけど…
まあいいや、と小さく呟いて、榎本を見た。
「…明日はちゃんと授業出るよ」
榎本は、そんな私を見て「うん」と笑った。
「んじゃ!」
榎本の背中が階段へと続く扉へと消える。
案外広い背中だな、なんてどうでもいいことを考えながら、榎本の消えた扉を見つめていると―――
不意にまた、榎本が扉から顔を出した。
榎本は笑ったまま、口を開くと―――――