星屑恋夜~【恭&綾シリーズ】3~LAST STORY

53.それぞれの未来へ(二)



恭司と綾が圭吾の病室を訪れると、先客が居た。

圭吾はいつもと違い、大人しくベッドの上に座っていた。

その婦人の後ろ姿を見て「母さん?」と恭司が声を掛けた。

振り返った女性は見るからに人当たりが良さそうな表情をしている。

そう綾は思った。


「あら、恭司。お見舞いに来たの?」

「ああ、うん。母さんは、知ってたの? おやじ――圭吾さんが入院していること」


静から頼まれていたことはいつも心の片隅にあったが、恭司は母親に話してはいなかった。

父親と圭吾は昔からの知り合いなのだから、ここに母親が見舞いに来ていても不自然ではないのだが、静から聞いた話のことで、恭司は母親が圭吾の見舞いに来ていることに戸惑った。



< 212 / 226 >

この作品をシェア

pagetop