星屑恋夜~【恭&綾シリーズ】3~LAST STORY

54.それぞれの未来へ(三)



言わなければならない――。

綾は勇気を振り絞ろうと瞼を閉じた。

最初のうちにちゃんと話しておくのだ。

自分の過去を。

一度結婚し、流産して子供が産めなくなったことを。

夫とは離婚したことを。

恭司とは十歳差があることを。

今言わなければ、きっと歯車が合わなくなっていく。

でも、大事な一人息子がそんな女性と結婚することを認めてくれるのだろうか。

恭はまだ若いのに。


「でも、やっぱり孫の世話とかは面倒臭いから居ないほうが楽かな」


ぼぞっと恭司の母親が言った。


「綾さん、私、こぢんまりとパン屋さんをやっているのよ。今度一緒にパンを焼きましょう。ぜひうちに遊びにいらしてね」


満面の笑みを浮かべ、綾の背中に手を添えてくれた恭司の母親の気遣いに綾は涙が浮かんでくるのを堪えながら頷くのが精一杯だった。

きっとこの人には心の中を見透かされ、そして気遣わせてしまった。

この懐の大きさに胸が震えた。


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