【短編】きみと花火の音



「ごめん、おまたせ」

「よう」



拓海は私に気が付くと暇潰しにいじっていたであろう携帯をすぐにポケットにしまい、右手を小さくあげる。

そして、私の姿を見て拓海はちょっと驚いたようすで口を開く。



「浴衣なんて持ってたんだ?」

「去年買ってもらったの。友達とお祭り行くとき、みんなで着たかったから」

「ふーん」

「どう、似合う?」



冗談めかして聞いてみた。



「どうだろうな」

「えー?」



わざと不満そうにしてみる。

だけど、



「千夏(ちなつ)はピンクのほうが似合うと思う」

「え? そう?」

「多分。……いや、絶対」



そう言ってニッと笑う拓海はなんだかかっこよかった。



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