カラダ探し
「うるせぇんだよ!! かかって来いやゴルァァァ!!」


この近距離での大咆哮に、高広も負けじと声を張り上げる。


気合いで負ければそれまでだと、そう思っていたから。


その呼びかけに答えるかのように、「赤い人」が高広に飛びかかった。


翔太の亡骸の向こう側から跳躍し、着地もせずに高広に襲いかかる「赤い人」。


こんな少女が、助走なしで3メートルも飛べるなんて、本当に化け物だな。


高広は、そう思いながら、自身の心臓目かけて伸ばされた赤い腕をつかみ、向かって右側にある壁に叩きつけた。


ゴンッ!と、コンクリートの壁にぶつかった「赤い人」の頭部からの振動が、高広の手に伝わる。


そのまま首根っこを左手でつかんで床に叩き付け、倒れている真っ赤な少女を、見下ろすように体勢を整えた高広は攻撃の手を緩めなかった。


「くたばれ! 化け物が!」


全体重を乗せて、その華奢な腰目かけて踏みつける。


こんな女の子なら、背骨が折れるか内蔵破裂か……もしかするとその両方かもしれないほどの威力はあった。


しかし、それを喰らってもなお、平然と立ち上がる「赤い人」に、高広もまた戦慄を覚えた。


そして「何か来る」と感じ取り、慌てて飛び退いたが、その判断は少し遅かった。


「赤い人」が立ち上がる際に軽く振ったように見えたその右手が、高広のふくらはぎの肉を削ぎ取ったのだ。
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