カラダ探し
「いくよ! せーのっ!!」


その言葉の直後、全力で引っ張り合ったぬいぐるみの頭部は、ブチブチっという糸が切れる音と共に穴が広がり、その中から遥の頭部が床に落下したのだ。


ゴロリと転がったそれを見て、ふたりは顔を引きつらせて硬直してしまう。


だが、固まっている暇はない。「赤い人」はすでに高広から離れて、ふたりの方に走ってきていた。






「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」






ぬいぐるみを引きちぎられて怒っているのか、それとも高広に踏みつけられて怒っているのか。


明らかに高広が相手をしていた時とは違う。


まがまがしい雰囲気に加え、身体を突き刺すほどの殺気をふたりは感じていた。


ここまできて、遥の頭を棺桶に納める事ができないなら、私は何のためにここにいるの?


何のために皆死んで、私達にこれを託したの?


そう思うと、動けない自分が情けなくて、震える身体を無理矢理動かして、理恵は足元に転がる遥の頭を拾い上げた。


後はこれを、階下にいる明日香に渡すだけですべてが終わる。


この恐ろしい「カラダ探し」をやらなくて済む。
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