車椅子から見える愛
「桜庭さん。お腹の赤ちゃんの様子がおかしいので、すぐに帝王切開します」
お医者さんがそう母に言ったの。
ーえっ〜!?様子がおかしいって何?ー
何がなんだかわからないまま、母は手術室へとストレッチャーで運ばれたのよね。
私は息も出来ないくらい苦しかったわ。
ーまた脊髄麻酔しなくちゃいけないんだ。あれ苦手なのよね。痛いし苦しいし。めちゃくちゃ怖いー
母みゆきは10代のときに盲腸の手術で脊髄麻酔をした時のことを思い出したみたい。
お腹を切られることよりもあの麻酔が嫌だと思っていたのよ。
「はい桜庭さん。お腹を抱えてま〜るくなってくださいね。絶対動かないで!背中をまるめといてね。絶対背中を引いちゃ駄目ですよ!」
麻酔の先生が母にそう言ったの。
ーこわ〜〜〜い!ー
母みゆきは思わず背中を引いてしまったんだよ。
そしたらさ〜。
「もう!なんで引いたの!引いちゃ駄目だって言ったでしょ!ちっ!もう一回!」
麻酔の先生が舌打ちしたの!先生のイライラが母みゆきの心をズタズタにしたのよ!なんつー意地悪な先生だろうって私も思ったわよ。