車椅子から見える愛
それから母は、漢方薬を飲み、カウンセリングに週に1回通ったわ。
「何を話していいのかわかりません」
「話したくないなら話さなくてもいいんですよ」
話せないと思ってたのに、母は1時間ずっと話し続けたみたい。
「泣けないんです。子供が死んだのに」
そう主治医にも訴えたみたい。
「それは自分の命を守ろうとしてそうなるんです」
「感情をなくすことが?」
「そうですよ。全部を受け止めたら、人間は生きてられません。だから脳が拒否するんですね。ずっと死んだことを思っていたらどうなります?たべることも何もやめてしまうでしょ。それに桜庭さんにはまだまだ守るべきものがたくさんあった。だからそれは仕方ないんです」
ーそうだったんだー
「時々、うわーーー!となることはあります」
「フラッシュバックでしょうね。そんなときは我慢しないで発散してください」
人間は弱いけど、生きる為に無意識に脳が何かをしているんだね……。