車椅子から見える愛

お父さん。お父さんはシャイな人だったよね。


でも、私とお風呂に入るときには、結構楽しくはしゃいだ声が、お母さんとおばあちゃんにも聞こえていたみたいだよ。


「貴久さん、かりんちゃんとお風呂に入ってるときは別人みたい。あはは」


バレてたみたいだよ。


遊園地で乗り物に乗るときには、いつもお父さんと一緒に乗ったよね。写真にたくさん残っているよ。


私がソフトクリームが好きだから、必ず自分から買ってくれたよね。そして私に食べさせて、そのまま舐めさせようとして、私の顔にソフトクリームがベチャッとついてしまって、お母さんに怒られたよね。


でもそれはお父さんの優しさだったんだよね。お母さんもちゃんとわかっているよ。


私が入院する度に、遠くの病院まで毎日のように来てくれたよね。すごく大変だったと思うのに。


その頃からもうすでに病魔がお父さんの身体を蝕んでいたのかもしれないね。こんなに早く死んでしまうなんて……。


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