車椅子から見える愛
目が覚めると病室にいた。
主人と母がベッドの横にいる。
赤ちゃんは?
怖くて聞けなかった。
「女の子だったよ、可愛いよ」
そう母が言った。
ふたりとも?
それも聞けなかった。
全部ウソのようで、ふたりともダメだったのではないか、そんな恐怖感が襲った。
だって泣き声は聞こえなかった。
赤ちゃんは保育器にいるらしい。
私はベッドから動けないので確かめに行くことはできない。
ひとりが生まれても死んでしまうだろうと聞いてから、みんな信じないようにしていたが、どこかで覚悟はしていたのだと思う。
それゆえに私のお腹の中の子の話は普通の妊婦さんのように、いつも明るく幸せに満ちてというようにないかなかったのだ。
でもお腹の子は元気過ぎるくらいに動いていた。赤ちゃんの足の形がわかるくらいに蹴飛ばされた。
なのに何故泣き声は聞こえなかったの?
我が子と対面できない数日はほんとに不安だけの日々だった。