Blood Tear
コウガに促された彼女は鋭い瞳で彼を見詰める。
「君は何の為に、誰の為に生きておる………?」
それはまるで、自分に投げかけられたかのような問い。
セルビアの鋭い眼差しにゴクリと息を呑む。
「時が来たらでよいのだ。その時が来たら、君の口から伝えてくれ」
緊迫した空気の漂う中、彼女は何かに反応したのかコウガから目を反らす。
張り詰めていた空気から解放され深く息を吐くと、部屋の中から階段を駆け降りてくる足音が聞こえてきた。
「ヒャッ!」
顔を上げ物音の方へと目を向けると、降りてくる途中で転んだイースと彼女を心配するリオンの姿が目に入った。
「本当に残るんだな」
「はい。ここまで付き添って頂きありがとうございました」
この街に残ると言うリオン。
彼はコウガに深々と頭を下げる。
そんな彼に頭をあげるように言うと、隣に立つイースに目を向けた。
「イースもここに?」
「もちろんです。イースはリオン様の護衛ですから!」
「そうか。リオンを頼むな」
常にリオンの傍で彼を守ると意気込む彼女の頭をコウガは優しく撫でた。
すると彼女はほんのり頬を染めながら笑う。
「ハァ~…そろそろ行きましょうか」
別れの挨拶を交わしていると、伸びをしながらジークが言った。
「それでは、お気をつけて」
リオン、イース、セルビアと握手を交わすとにっこり微笑んだ後ジークの元へと歩いていく。
レオンも子供達に別れを言うと2人の元へと駆けていく。
日陰に身を隠していたクレアはゆっくりと立ち上がり3人の後を追う。
「皆さーん、お元気でー!」
4人の後ろ姿を見つめながら大きく手を振るイース。
4人の姿が見えなくなるまでイースは手を振り続け、 リオンはじっと彼等の背中を見つめていた。
腕を組むセルビアは真上に昇る陽を見つめゆっくりと 息を吐く。
数分もの間、眩い太陽を無言で見つめていた。