Blood Tear


意味が分からない。
何が起こっているのだろう。
一体何が…



 「どうしたコウガ?冗談を言うなどお前らしくもない 。変な夢でも見たのか?」


混乱しているのが分かったのだろう、ジョゼノフは心 配するように声をかける。



あれは夢などではない。

否、夢であって欲しい。


だが事実なんだ。
彼女は存在していて、そしてここで命を落とした。


なのに元から彼女が居なかったような、彼女の存在すらなかったような物言い。




頭がどうにかなりそうだった。

気分が悪くなった。

呼吸が苦しい。
頭痛がする。


目眩がして座り込んだ。

2人は心配そうに何か言っている。


だが何を言っているのだろう、耳に入ってこない。



座り込み頭を抱えていると…




 『コウガ…』


自分の名を呼ぶアリアの声がしたような気がした…


優しい声に顔を上げると、スカイブルーの瞳に映った のはこの教会を見守る女神象…



その女神の頬には、血の伝った跡が涙のように残っていた…



それが、それだけが、真実を現していたんだ…


彼女、アリアの存在を…

彼女の死を…









< 11 / 489 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop