Blood Tear
ふらふらと立ち上がり霞む視界の中に彼女の姿を捉える。
「不幸になんかなりませんよ…私は貴女と一緒に居られるだけで、それだけで幸せなのですから……」
優しく言うと彼は彼女に手を伸ばす。
「私は絶対に、貴女の前から消えたりしません…だから、私の傍に居て下さいませんか、シェノーラ様」
真っ直ぐ見つめる紺の瞳。
握っていた鍵へと目を向けると、彼女は決意したように握り締める。
ふと後ろを振り返ると、静かに部屋を出るコウガの姿が目に入った。
ゆっくり扉を閉める彼にありがとうと呟くと、彼は優しく微笑み部屋を後にする。
手を貸してくれた彼に感謝しながら、足枷へと手を伸 ばす。
窓から覗いていた彼女の姿が突然消え動揺したジークだが、再び顔を見せた彼女にホッと胸をなで下ろす。
「ジーク、私にとって貴方は決して失いたくない大切な存在。だから此方からもお願いするわ。私の傍に居て下さい、ジーク・ブロッガー」
「…仰せのままに」
胸に手を添え頭を下げる彼はニッコリと微笑んで両手を広げた。
身を乗り出す彼女は涙を浮かべ、心からの笑みを向けると迷いもなく窓から飛び降りる。
籠の中に捕らわれた鳥が羽を広げ飛び立って行くのだった。