Blood Tear
日が沈みかけたある日の夕方、山々に囲まれ孤立した小さな街のある一軒家に少女が1人、分厚い本を片手に顔をしかめていた。
二階に並ぶ本棚の前に立つのは赤髪の少女、セルビア・フォールン。
彼女は背にした柵に寄りかかると溜め息を吐く。
そしてパタリと本を閉じると勢い良く振り返り手にしていた数本のナイフを入り口へと投げつける。
「挨拶にしては酷すぎないかい?」
ナイフが床に落ちる音と共に聞こえたのは少年の声。
床に転がるナイフを拾う黒いローブを身に纏う細身の人物。
フードを目深に被るその人物の後方にはもう2人、同じく黒いローブを身に纏う。
「残念だが、リオンは此処には居らんよ」
攻撃を交わされ舌打ちをするセルビアは3人を睨み観察する。
未来を視た彼女は彼等が此処へ来る事も、その目的も知っていた。
彼等からリオンを守る為、既にリオンを此処から出し ている。
「知ってるさ。君が彼を護る為に未来を変える事位わかってる」
「だったら何をしに此処へーー」
ナイフを眺め言うその人物を鋭い瞳で捉え、彼等の目的を聞こうとした彼女だったが何かに気づいき身を屈めた。
「決まってるだろ?君をの力を奪いに来たのさ」
状態を低くした瞬間、彼女の上空を通過する巨大な剣。
風に揺れた赤髪が刃に触れ辺りに散る中、剣は軌道を変え伏せる彼女へと振り下ろされる。
「クッ……」
前方に転がり何とか交わすと大剣を持つ長身の男から離れる為柵に手をつけ一階へと飛び降りる。
男は逃がすまいと柵に飛び乗る彼女へと再び剣を振り下ろすが、俊敏な彼女には当たらず粉々に柵を粉砕した。
柵の破片が頬を切り伝う血を拭う彼女は考える。
先程3人を観察していた彼女は把握していた。
3人の内戦闘可能なのは大剣を握る彼1人。
残り2人は戦闘には加わらない。
そう確信していた彼女は二階の男性にしか目を向けて いなかった。