Blood Tear
身を震わせ、箒の柄を握る小さな少女に護られるリオン。
目の前の男と彼女を戦わせるべきではない。
彼は拳を握り締め、何かを決意し口を開く。
「すみません、イース……」
「えっ……?」
イースの背を見つめていたリオン。
彼は一度謝ると彼女の背に手を伸ばした。
何故謝るのかと振り返るイースだが、彼の顔を目にする間もなくバランスを崩し山道を転げ落ちて行く。
鋭い枝で身を傷つけ、転がる小石で打撲する。
体中に傷を負った彼女は何が起こったのか分からず上を見上げると悲しそうな顔をしたリオンの姿が目に入った。
「…リオン…様……」
打ち所が悪かったのか、朦朧とする意識の中彼の名を呼び手を伸ばすが、その手は届く事はなく彼女は意識を手放した。
意識を失い倒れるイースを見つめるリオンは唇を噛み拳を握ると赤目の男に向き直る。
「フンっ…良い子だ」
悲しそうな瞳の彼の頭を撫でる男は軽く笑うとリオンと共に姿を消した。
木々はザワリと揺れ、小鳥達は飛び立って行く。
夕日は沈み、欠けた月が夜空に浮かぶ。
月明かりが山道を照らす中、気を失うイースの姿だけが其処にあった。