Blood Tear


温かい人のぬくもりに触れ何時の間にか眠っていたシェノーラ。


騒ぎに目を覚ました彼女はジークに降ろすよう促した。


彼の背から降りた彼女はレグルの前に跪く。




 「レグナード・ディ・ルーガン様、この度は御助け頂きありがとうございます。貴方様の御手を煩わせてしまい申し訳御座いません」


 「シェノーラ様、こんな奴に頭を下げる必要なんてないですよ」


頭を下げる彼女にリョーガは顔を上げろと言うが、レグルに鋭く睨まれ更にはジークに突き飛ばされた。




 「私シェノーラ・フィール・ラグナー、貴方様にお頼み申し上げます。我がスウィール国を救っては頂けないでしょうか」


深く頭を下げ言うシェノーラ。

彼女の隣でジークも跪き頭を下げる。




 「無力な私には、スウィール国を治める力など御座いません。私は貴方様にスウィール国を託したい。この願い、訊いては頂けないでしょうか」


脚を組みくつろぐレグルは顔色一つ変える事なく2人を見下ろす。


王族の彼は顔見知りの彼等を目の前にしても態度を変える事は決してない。




 「国を託すとは、スウィール国を捨てると言うのか?」


 「結果的にはそうなるのでしょう。しかし、私にはスウィール国を平和にする力はないのです。それなば、愛する我が国を平和に、幸せにしてくれる御方に国を預けたい。我が国を託せるそのお方がレグナード様、貴方様なのです」


 「スウィール国がラグナレア国の領土となれば、シェノーラ、お前はその名も地位も全て失う事になる。その覚悟があると?」


 「スウィール国の為ならば、この名も地位も全て捨てる覚悟はできております」


暫く沈黙が続く中、レグルは2人に顔を上げるよう促した。



ゆっくり顔を上げると、優しい青の瞳の彼の姿が目に入る。










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