Blood Tear
雲1つない澄んだ青空。
その中を優雅に舞う小鳥達。
穏やかな風は草花を揺らし、川の水は静かに流れる。
暖かな陽は賑わう町並みを照らし、人々は明るく活気づいていた。
その町並みの中を歩く1人の青年。
人々の間をすり抜けながら、彼は足早にどこかへ向かう。
「あら、コウガじゃないか」
「おはようございます、アカリさん」
色鮮やかな果物を売る年配の女性は彼を目にするなり元気に声をかけた。
すると彼はにこやかに微笑み挨拶をする。
彼の名はコウガ・シェイング。
茶髪にスカイブルーの澄んだ瞳。
整った顔立ちをした細身の青年である。
彼はこの町の住民であり、たった独りの騎士でもある。
というのも、彼は不思議な力を持っているからだ。
不思議な力、一般の人々には存在しない力。
人々はそ れを魔力と呼び、また邪悪な力だと嫌悪する。
この世に数少なく存在する能力者。
武器を造り出し傷を治癒する。
様々な力を使う者達。
その内の1人が彼、コウガである。
「ほらこれ、持っていきな」
「!っと…ありがとうございます」
果物を売る年配の女性はコウガに赤い果物を投げ渡す。
彼は難なくそれを受け取ると一言礼を言い再び歩き出すのだった。