Blood Tear
部屋を訪れたコウガは傍の椅子に腰を掛け、ベッドの上のクレアに話しかける。
「傷、まだ痛むか?」
「…この位、どうって事ない……」
嘘だ。
骨は折れ、腹部には背にも及ぶ深い傷を負っていると言うのに、何ともない筈がない。
彼女は腹部の怪我を隠すように布団を胸まで押し上げた。
「骨が折れてるんだろ?あまり無理するな」
「…怪我の治りは早い方だから、肉を食べれば直ぐ治る……」
「肉って……」
他人に心配される事に慣れない彼女は顔を伏せ、独り言を言うようにぼそりと呟く。
彼女のその言葉を耳にしたコウガは呆れたように言葉を漏らす。
この場に及んで食い気が勝つとは、頭の中にはそれしかないのかと疑ってしまいそうになる。