Blood Tear
「何故此処に?」
「君達が此処に居ると聞いてな。しかも、生きているかわからないとも言っていた」
コウガの問いに答えたのは、金髪に青い瞳の男性レグル。
目立つ為帽子を被る彼はラグナレア国の王子である。
「そんな事、誰から……?」
「黒いローブを羽織った、殺気だらけの赤目の男だ。仲間になれと言われ、断ったら君達の情報をくれてな。心配になって来てみたが、元気そうで何よりだ」
黒いローブの赤目の男。
ライアの仲間である、クレアの知人だろう。
彼が2人の前に現れたと言う事は、彼等にも何かしらの危険が身に及ぶという事。
何事もなく男は退いたと聞いて少し安心した。
「危険な真似はしないで下さい、お嬢様」
「私はお嬢様ではありません。シェイラとお呼び下さい、ジークお兄様」
「お、お兄様……」
見知らぬ土地を歩いてきた彼女を心配して声をかけるが、彼女は不服なのかジークを睨む。
「そんなに距離はありませんでしたし、この位の旅なら危険ではありません。それに、レグルも居ますし」
レグルを見上げ微笑むシェイラ。
話を聞いていなかったレグルは首を傾げるが、ジークは彼を憎らしげに睨み付けた。
「一国の王になる身である貴方こそ、何故国から離れ此処にいるのです!?自分の置かれている立場を考えて下さい!」
国を離れ何をしているのかと叱りつけるが、当の本人は冷静に対処する。
「国の事なら心配ない。全てリョーガに任せている。それに、俺がラグナレア国の王になるまでの一時の間、自由の身になる事を現王たる父に許されている。何も心配する事はない」
「しかし、命に関わる危機にでも直面したら……」
「まぁ、その時はその時だ」
爽やかに微笑み肩を叩く。
そして何気なく彼に近寄ると、そっと耳元で囁いた。
「リョーガとシェイラを2人きりにさせても良かったのか?彼奴は何をするかわからないぞ?」
ジークにだけ聞こえるように言ったレグルは何事もなかったように肩を叩き彼から離れる。