Blood Tear
翌朝早朝、陽が昇り始めた頃、コウガ達の姿は村の外にあった。
昨日言った通り、村を出る事にした彼等は静かに道を歩く。
村人達はまだ寝静まっている為、水のせせらぎや小鳥達のさえずり、虫の奏でる自然の音色が耳に入る。
昨日リオンを訪ねて来た村人は誰一人いなかった。
心残りがないと言えば嘘になる。
だが、自分が出来る事はもうない。
これ以上は仕方ない事だと言い聞かせ、村を後にする。
「リオン様!」
村の方から聞こえてきたその声に、リオンは驚きながらも振り返る。
最後尾を歩いていた彼の瞳に映ったのは、彼のよく知る村人達の姿。
「皆さん、どうして……」
「リオン様、貴方にお会いしたくて……」
リオンを見つめる村人達の中には、昨日出会った女性の姿もある。
村人達の姿に目を見開くリオンだが、罪悪感からか直ぐに彼等から目をそらした。
「私達には、貴方に会う資格などないとわかっています。しかし、それでも貴方の姿をどうしてもこの瞳に映しておきたくて……
12年もの間、貴方を苦しめ続けてしまって、貴方に辛い思いばかりさせて、申し訳ありませんでした」
頭を上げる村人達。
戸惑うリオンはそんな彼等に顔を上げるよう促した。
「謝るのは、僕の方です。僕はこの村から、貴方達から逃げ出した、哀れで卑怯な人間なんです」
「そんな事ない。リオン様は強いお方です。苦しみに耐え、何事にも眼を背けず今まで生きてきた、とても強い、立派なお方です」
眼を背け謝罪の言葉を口にするリオンだが、思いもしない村人の言葉に驚いたように顔を上げた。
「僕を、許してくれるのですか……?」
「許すも何も、俺達は貴方を恨んでなんかいないよ」
揺れる瞳を向けるリオンに男性は優しい声音で話しかけた。