Blood Tear
バイオリンを弾き終わり余韻に浸っていると拍手が送られる。
閉じていた瞳をゆっくり開くと、手を叩くスティングの姿を瞳に映す。
「あら、御機嫌よう、スティング、カンナギ」
「久しぶりだな、ティム」
柔らかくウェーブのかかった金髪にオレンジの瞳。
紺 色のドレスにミニハットを頭に飾る彼女はティムリィ ・ヴィネッド。
貴族育ちの上品な女性であり、ベイン・ローグと名乗る男を裏で操っていた人物である。
「所で、あのお嬢様は殺さなかったんだって?」
破れ埃まみれのソファーに腰掛けたスティングの問いにティムリィはバイオリンをしまうとトランクを音を立て乱暴に閉めた。
どう見ても不機嫌そうな彼女。
バランスの悪い丸椅子に腰掛けると微笑んで見せる。
「彼女、生きておりますわね。この世から消すつもりでしたのに、しぶといお方ですわ」
にこやかに言う彼女だが、その言葉は鋭い棘を持つ。
「あんな男などに任せるのではありませんでした。本当、使い物にならないくず、この世の塵、存在自体が罪なのですから」
楽譜に何か書き込む彼女。
力強く握りられたペンは真っ二つに折れていた。