Blood Tear
スティングはソファーに深く腰掛けワインを飲み、カンナはナギの髪を櫛でとく。
マットは背もたれに顎を乗せ目を瞑り、ティムリィはマニキュアを塗った爪を研ぐ。
獲物を狙うような目つきでエルウィンは辺りを見回していると、黒いローブを身に纏う人物が姿を現した。
「やぁエルウィン、元気?マット、研究の方はどうだい?」
「……」
「あぁ、順調順調」
フードを目深に被る彼、ライアは2人に声をかけるとエルウィンは無言で片手を挙げ、マットはくるりと椅子を回転させる。
「遅くにすまないね、カンナギ。すぐ終わるから。スティング、飲み過ぎじゃないか?酒は控えなよ」
リビングの中を歩くライアはうとうとしていたナギの頭を撫で、スティングからワインを奪い取ると奥にある一人掛けの古びたソファーに腰掛けた。
「久しぶりだねティムリィ。元気にしてた?」
「えぇ、御陰様で。所でライア、此処ではそれを脱いでは如何?」
スティングから奪ったワインを口にふくむ彼に微笑むティムリィ。
身を隠すようにローブを身に纏いフードを被る彼に口出しするが、彼は冷たく笑うとフードの裾を掴み更に深く被ってみせる。
「この格好が一番落ち着くんだ。別に君達を信用してない訳じゃないからさ、許してよ」
「…別に、構いはしませんけど」
「うん、ありがとティムリィ」
隠れて見えないのだが、鋭く冷たい瞳で睨まれたような気がして、息を飲むと顔を背けるティムリィ。
そんな彼女を見てククッと喉で笑うと、彼はワインを飲み干しグラスを投げ捨てた。
「皆、揃ったようだね」
グラスの割れる音が響く中、ライアは肘をつき脚を組む。
「否、フリードがまだ……」
「彼なら其処に居るじゃないか」
1人揃っていないと否定するが、彼の言葉にライアは部屋の隅を指差した。
「いつの間に……」
皆そちらへと顔を向けると、確かに其処には1人の男性が立っていた。