Blood Tear
静まり返った湖のほとり、2人の男女が木陰に座り込む。
その身体は互いに血まみれで、辺りには血痕が散っていた。
木の葉に溜まっていた雫が、眠るように目を瞑るアンバーの頬に舞い降りる。
その雫が頬を伝い消えた後、それとは異なるもう一粒の雫が舞い降りた。
「…アンバー……」
ギュッと彼女を抱き締めるレグル。
何度その名を口にしようが、返事は返ってはこない。
救えなかった。
只その言葉だけが頭の中をさまよい続ける。
造られた存在の彼女だが、そんな彼女にも生きる権利はある筈だ。
他者の身勝手で存在を消していい訳がない。
人ではない彼女だが、人よりも人間らしい一面を持っていた。
誰よりも純粋で、真っ直ぐで、笑う事だってできた彼女を救いたいと、手を貸したいと、そう思っていたのに何もできなくて、結局彼女を救えなかった。