Blood Tear


 「ナイスタイミングだね、スティング」


 「ったく、1人で勝手に姿を消すな」


目の前に現れたのは、ライアと同じ黒いローブを身に纏う長身の人物。


手にした林檎をライアへ返すと地を蹴りその場から離れた。




 「いきなり斬りかかるのはどうかと思うが」


 「煩い……」


先程までスティングが居た場所に突き刺さる刃。


それを引き抜くコウガはスティングを鋭く睨み、彼に再び斬りかかる。




 「1つ、誤解を解いてもいいか?」


コウガの攻撃を手にした大剣で受け止め言うスティング。


しかしコウガは何も言わず、只々スティングを睨みつける。


何か言葉を求めるようにライアへと目を向けるが、彼は肩を震わせ笑いながら林檎をかじるのみ。


スティングは溜め息を吐くとコウガを見やる。




 「俺はお前の仇ではない」


 「は?」


唐突な言葉に眉を潜めるが、気にせず言葉を続ける。




 「俺はアリア・ダージェス、お前の恋人を殺していない」


彼の口にした言葉、否、名前に反応を見せたコウガ。


微かに目を見開き、一瞬呼吸を止め何もかも忘れスティングを見つめた。










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