Blood Tear
――俺はアリア・ダージェスを、お前の恋人を殺していない――
頭の中で、何度もその言葉が繰り返される。
波の音も、風の音も、機械音も、笑い声も、どんなに大きな騒音すらも耳に入らない。
聞こえるのは、頭の中で鳴り響くその言葉のみ。
アリアを殺していない…?
だったら彼女は生きていると言うのか?
今も何処かで生きていると?
否、それは有り得ない。
存在すら抹消された彼女が生きているなんて、そんな筈がない。
「…嘘だ……嘘を…嘘を吐くな……お前が、お前がアリアを殺したんだーー!!」
あの日見たのは、アリアの胸を貫いたのは、黒いローブを身に纏う目の前のこの男。
そう、男… おとこ…?
何故そう言える?
何故男だと断定できる?
あの時見たのは後ろ姿のみ。
顔すらも見ていない。
ローブに身を包みフードを深く被っていた為、実際の所男か女かも判別しずらい。
間違っている…?
間違っているのか…?
アリアを殺したのは彼ではないと…?
彼は無実だと…?
だったら誰が…?
誰がアリアを…
アリアを殺した…?