Blood Tear


そんな問いに答える筈もない。


諦め半分だったのだが、ライアは足を止めると振り返る。




 「…いいよ……」


正直驚いた。

そんな言葉が返ってくるとは思いもしなかったから。




 「君にだけ見せてあげる。僕の素顔を」


潮風に靡くフードの裾を掴むライア。

その姿にゴクリと息を呑む。


しかし彼はフードを脱ぎ顔を見せる事は無く、裾を引っ張り更に目深にフードを被った。




 「但し、此処では見せない。明日の早朝、君が何か大切なものを失った場所においでよ。其処で僕はこのフードを脱ぐ。それで良い?」


彼の素顔を見る為には仕方のない事だと、コウガは頷き同意する。




 「それじゃあ明日、陽の昇る頃に……きっと、君の会いたい人に会える筈だよ、コウガ・シェイング……」


その言葉を残し、2人は其処から姿を消した。





真っ赤な林檎が地を転がり、コウガの足下で動きを止める。


それを拾おうと手を伸ばすが、指先が触れる直前でその林檎は無惨にも潰れ形を失った。










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