Blood Tear
言われるままに手を下ろし首を傾げると、ポタリと落ちた一滴の雫。
見下ろせば、雫の落ちた服は液体を吸収し赤く染まっていた。
目の下辺りに走る、鋭いものに切られてできた小さな傷跡。
そこから流れた赤い血が頬を涙のように伝っていた。
「言った筈ですよ?動かない方がよろしいと」
クスリと笑う彼女は空になったティーカップに紅茶を注ぐ。
「貴方の周りには、目に見えない程細い弦が張り巡らされています。それは鋭い刃を持ち、触れただけで傷を負う程のもの。その首をはねる事など、容易い事なのです」
ティースプーンを見えない弦に添え、振動させる彼女は悪戯に笑ってみせる。
不快な音を立て揺れる弦はシェイラの腕に、頬に、太股に触れ傷を負わせた。
「今、貴方の喉元には数本の弦が添えられています。この弦を引けば、貴方はその命を落とす事になる。どうなさいます?今すぐ命を落とします?それとも、その身をいたぶってじわじわと追い込んで差し上げましょうか?」
高らかに笑う彼女を睨むシェイラの首に弦が触れ、一本の赤い線が浮かび上がった。