Blood Tear
スウィール国の王女シェノーラは、世間体では死んだ事となっている。
なのに彼女はシェノーラが生きている事を知り、目の前の人物がシェノーラであると言う事実も知っている。
シェノーラがシェイラと名を変え生きている事を知るのは共に旅をする5人とレグルの側近達の極わずか。
先程出会ったばかりの彼女が、何故それを知る?
「何故って、酷くはありませんか?私の事をお忘れになるなんて。私はこんなにも、貴女の事を知っているのに」
屋敷に閉じ込められていた為、人との関わりの少なかったシェイラ。
彼女は顔見知りだと言うが、シェイラには彼女と出会った過去の記憶を思い出す事ができない。
「仕方ありません。私のファミリーネーム、否、フルネームをお教えして差し上げましょう」
机の上に腰掛け脚を組むと、オレンジ色の瞳でシェイラを見下ろした。
その姿を見つめるシェイラはゴクリと息を呑む。
「私の名はティムリィ・ヴィネッド。この名を聞いて思い出して頂けましたか、シェノーラ様?」
「…ヴィネッド……ティムリィ・ヴィネッド……!?」
「そう、ヴィネッド。ある日突然奇怪な死を遂げた、あのヴィネッド家の娘ですわ、シェノーラ・フィール・ラグナー様」
彼女、ティムリィは驚き目を見開くシェイラを見つめ妖艶に微笑んだ。