Blood Tear
「…しかし、ヴィネッド家は13年前に滅んだと……一族の血は絶えたと……」
ヴィネッド家。
スウィール国に長年身を置く、全国に有名な名のある貴族。
社交的で人当たりがよく、とても愛想のいい気さくな家系であり、反感を買う事無く誰からも愛される一族だった。
しかし、13年前のある嵐の夜、ヴィネッド家は奇怪な死を遂げ一族の血は絶えた。
猟奇的殺人者による一族惨殺事件。
その被害に合ったのがヴィネッド家。
無惨な死を遂げた一族の中で生存者が居たとは聞いていない。
目の前で悪戯に微笑む彼女は、そのヴィネッド家の生き残りだと言うが、それは真実か否か。
「確かに、あの日私の家族は全員死にました。しかし、私だけは運良く生き残る事ができたのです。私が無事である事は誰一人知り得ぬ事実。驚くのも仕方ありませんわ」
悲しそうに細められたそのオレンジの瞳には見覚えがある。
嘘ではない。
間違い無く、目の前の彼女は本物のティムリィ・ヴィネッドそのものである。