Blood Tear
ポタリ、ポタリと毛先から雫が零れ落ちる。
閉じていた瞳をそっと開け、伏せていた顔を上げたシェイラは揺れる瞳をティムリィへと向けた。
「大嫌いでしたよ、貴女の事なんて。幼い頃からずっと、ずっと今まで、貴女の事なんて好きじゃなかった」
空になったティーカップは細い指から離れ、床に転がり割れてしまった。
彼女の言葉にドキリと心臓は跳ね、陶器の割れる音に身は震える。
「誰からも愛され可愛がられて、大切に育てられてきた貴女の事なんて好きになる訳ないじゃないですか」
並べられたクッキーを口に運ぶティムリィは組んでいた脚を組みかえシェイラを睨む。
「確か、貴女私より2つ年上でしたよね?28歳の筈なのに18歳のままのその姿は滑稽と言うか何というか……」
口元に手を添えクスリと笑うと、今度は鋭く目を尖らせる。
「覚えていますか?私が8歳の誕生日を迎えた日、貴女が私に言った言葉を」
「8歳の誕生日に…言った言葉……?」
過去に遡り思考を巡らすが、18年前の幼い記憶は曖昧なもので、思い当たる節は見つからない。