Blood Tear
「うぅ……ああぁぁぁーー!!」
ティムリィは乱暴に頭を掻くと声を荒げ暴れ出す。
花瓶が転げ割れた硝子が彼女の脚を傷付ける。
楽譜がヒラヒラと舞い、彼方此方にCDが散らばった。
「…居たのよ……御姉様は……私の傍にずっと……」
確かに、私には姉が居た。
全ての痛みや苦痛から庇ってくれる存在の姉が。
なのに彼女はそれを否定する…
だったら、だったら彼女を殺せば良い。
そうすれば、私を疑う人物は居なくなる。
姉を否定する人物が居なくなる。
それで全てが解決するのだ。
彼女を殺せば私は元の自分に戻れる。
咲き誇る薔薇を踏みつけたティムリィはシェイラを睨み、果物ナイフを手に取った。
鞘は抜け落ち床に転がり、ナイフを両手で握る彼女はゆっくり一歩ずつシェイラに歩み寄る。
「ティム……」
「…貴女が悪いのよ…貴女が……」
シェイラとの距離を確実に縮める中、棚に置いてあったバイオリンが突如転がり、ティムリィの行く先を塞ぐよう倒れた。
バイオリンに躓き足を踏み違え、彼女の身体はバランスを崩し倒れて行く。
その先には張り巡らされた鋭い弦。
目を見開き声をあげる事無く、彼女はその中へと倒れて行った。