Blood Tear
何事だと眉を潜めるマットは自分の顔に陰が差したのに気づき見上げると、頭上から木材が降って来るのが目に入った。
「ワァオ……」
作業中の建物に吊されていた木材の縄に銃弾が掠り、縄が切れ支えを失ったそれは落ちてくる。
彼は何か呟くが其処から一歩も動こうとはせず、ギリギリの所で駆けつけたアリューによって救われた。
「痛たたた……あれ……?」
突き飛ばされ尻餅をつくマットは腰をさすりながら立ち上がると、前方を見やり首を傾げる。
と言うのも、其処に居る筈のレグルの姿が何処にも無いのだ。
「隠れん坊かい?ラグナレア国の王子様……」
眼鏡を押し上げそう言うと、彼はアリューの名を呼んだ。
すると木材の下敷きになっていた彼女は姿を現し、虚ろな瞳を彼へと向け首を傾げた。