Blood Tear
「それ反則!剣も使えるとか訊いてないって」
「剣が使えるのは当たり前だろ。むしろ剣の方が得意と言っても良い位だ」
座り込んだアリューの髪を掴み無理やり立ち上がらせ、歩み寄ってくるレグルから逃げるように後退するマット。
彼は懐から注射器を取り出し、アリューの細く血色の悪い腕に針を刺し不気味な液体を流し込んだ。
「知らないお前が悪い。残念だったな」
それを不審に思いながら見つめるレグルは手に握る剣の柄を握り締め、その感覚を確かめると切っ先をマットに向け青い瞳を鋭く細めた。
「お前は一体何をするつもりだ?」
「何って何の事かな?」
向けられた刃に息を呑み冷や汗を流しながらも平然を装い問い返す。
一歩後退した瞬間眼鏡がずり落ちたが気にしない。
「お前は人工生命体を創り出す事に成功している。この世を滅ぼし、人の居なくなった世界でそれを人間の代わりとし、神にでもなるつもりか?」
「神ね……フフッ面白い事言うね、君」