Blood Tear
「くっ……」
振り下ろされたメスはアリューにではなく、割って入ってきたレグルに突き刺さる。
彼はアリューを胸に抱き、彼女を庇うと自らの身に刃を受けたのだ。
「うっ…つっ……」
レグルはマットの腹を蹴り突き飛ばすと肩に突き刺さるメスを引き抜き投げ捨てた。
庇われたアリューはレグルを不思議そうに見上げ、溢れ出る血に首を傾げる。
「…アリュー…貴様……誰のお陰で此処に居られると思っている……誰のお陰で存在していると思っている……あ"!?…人形の分際で、この僕に逆らうつもりか……!?」
傷口を押さえるマットは額に汗を浮かべながら声を荒げる。
マットに従順に従い続けてきた彼女。
そんな彼女が主に刃を向け傷つけた。
何故そんな事をしたのか、彼女自身もわかっていない。
でもきっと、彼女は許せなかったのだ。
自分をがらくただと言う彼が。
道具としてしか見ない彼が。
愛情を向けてくれない彼が、許せなかったのだ。
だから彼女は彼に反抗し刃を向けた。
自分は道具ではないと、人ではなくても愛情を注いで欲しいと言う、そんな思いが彼女を突き動かしたのだ。