Blood Tear
「…主に従わないお前など必要ない……廃棄だ…消えろ……この、不良品が!」
胸の中に居るアリューが、ぴくりと身を震わすのがわかる。
レグルは彼女に回した腕に力を込め、強く抱きしめると銃口をマットへと向けた。
その引き金を迷いもなく引くが、銃弾は彼の肩を掠っただけ。
狙いを定めた所に銃弾は当たらず眉を潜め見下ろせば、銃に手を伸ばし軌道をそらすアリューと目が合った。
一瞬、これも策略の内なのではと疑いを抱く。
隙を見せ敵に近づき不意を打つ。
その為の演技だったのではないかと。
しかし、そうでないとすぐに気づく。
向けられていたのは、とても純粋で真っ直ぐな瞳だったからだ。
「カハッ……ハァ…ハァ……アリュー……」
ふらつくマットは多量の血を吐き苦しそうに息をする。
多分、朦朧とする意識の中幻覚でも見ているのだろう。
アリューに怒りを抱いていた筈なのに、彼はそれすらも忘れた様子で彼女に助けを求め名を呼んだ。