Blood Tear
「ぐっ……!?」
身体に走る激痛に、目を見開き息を呑む。
一瞬何が起きているのかわからなかったが、自分の胸の違和感と広がる血液、アリューの背から伸びる刃と長い柄を目にして理解する。
この剣が、自分達2人を貫いているのだと。
「…アリュー……」
名を呼ぶマットは彼女の頬に触れ、頭を撫でると髪に触れる。
彼女を見つめ微笑むと、髪に絡めていた指は離れ、力なく床に落ちて行った。
「……」
見下ろすアリューは彼が息をひきとるのを見送ると、彼に寄り添いそっと瞳を閉じる。
閉じられたその瞳から零れるのは一粒の雫。
感情も何も持たない彼女が自らの意志で行動を起こし涙を流す。
その姿は人と同等で、只の道具ではなく1人の人間そのものだった。
2人の胸を貫くツーハンデッドソード。
多量の血が広がる中で、2人は幸せそうに寄り添い静かに眠るように瞳を閉じる。
その姿を目にしたレグルは傍にあった帽子を手に取り深く被り、鍔を掴むと顔を隠す。
そしと軽く頭を下げ、瞳を閉じて黙祷を捧げた。
窓から差し込む暖かな陽の光は2人を優しく照らす。
窓辺で羽を休める小鳥達は彼等に祈りを捧げるように静かに見守っていた。