Blood Tear
猛スピードで振り下ろされた刃。
それは獲物を捕らえ斬り裂いた。
刃先は赤く染まり、散った鮮血が頬を汚す。
「ん?」
確かに刃は肉を斬り、生暖かい鮮血も地に舞った。
しかしフリードは目を細め、まだ息のあるクレアを見下ろした。
「…死ぬ訳には…いかない……」
ぼそりと呟いたクレア。
振り下ろされた短剣の刃を右手で掴み、心臓を貫かれるのを防いだ彼女は更に力強く刃を握る。
深く刃が食い込み溢れ出る血が雫となって落ちてゆく。
「…死ぬ訳には、いかないんだ……!」
自分に言い聞かせるように同じ言葉を繰り返した彼女はフリードから短剣を奪い彼の腹を蹴る。
不意打ちを食らった彼はその蹴りを受け後ろに後退。
奪われた短剣を投げつけられるが、身を捻りそれを回避。
クレアへと目を向けると、彼女は身体に突き刺さる短剣を引き抜き立ち上がっていた。
「血に狂ったか……?」
フリードは眉を潜め呟くが、銀髪から覗く瞳を目にして確信する。
彼女は血に狂ってなどいない。
未だ正気を保っていると。