Blood Tear


その場から一歩も動かず、飛んでくる短剣をジッと見つめるクレア。


軌道を変える事の無い短剣はそんな彼女の頬を掠り地に落ちた。

頬を伝う血を拭おうとはせず、彼女はフリードの姿を瞳に映す。




 「…この罪を忘れる事などできない……私はこの罪を背負い、罪を償う為に生きると決めたんだ……」


 「罪を償う?生きる事で償えるとでも?」


 「償えないさ……この罪は、何をしたって消える事はない……一生この身に背負い続けなければならないものなのだから……」


悲しそうに細められたその赤い瞳を目に、フリードは何か言おうと口を開くが直ぐに閉じられた。




 「私が生きる事など許される筈もない。そんな事位分かっている。でも、それでも私は、自ら奪った一族の分まで、彼等の成せなかった事を彼等の代わりに成し遂げたい。私達のような一族にも、この世界に居場所があるのだと言う事を示したいんだ……」


 「…善人ぶるなよ…この死神が!」


怒鳴り声と共に宙に浮く短剣は動きを見せる。










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