Blood Tear
重い扉は軋んだ音を立て開かれる。
長い間閉ざされていた其処に外気が侵入し、所々に降り積もる埃が宙を舞う。
教会の中へと足を踏み入れたコウガは咳き込み、その音が静かなこの教会の中にやけに響く。
奥に設置されたパイプオルガンに女神像。
色鮮やかなステンドグラスに大きな十字架。
何ら変わりのない見慣れたその様式。
変わるのは、壊れた長椅子に汚れた壁や床。
そして、綺麗だった女神像の頬を汚す黒いシミ。
懐かしそうでいて何処か悲しそうなその瞳で教会を見回す彼は、自分とは異なる他者の存在に気づく。
十字架の前、片膝をつき祈りを捧げるその人物。
コウガの視線に気づいたのか、その人物はゆっくりと立ち上がる。