Blood Tear


 「君がその手を血で汚す事など無い。深い傷を、消えない罪を背負う必要も無いんだ。だから、後は俺に任せてはくれないか?」


 「……」


スティングの言葉に黙り込むコウガ。


暫く考えた後剣を下ろした彼を目に、頭を下げるスティングはライアを抱える。




 「…ハハッ……良いのかなぁ…彼の言葉なんか信じちゃって……本当に、良いのかなぁ……ハハハッ……!」


言葉を発するのも辛い筈なのに、平然を装い笑ってみせるライア。


彼は最後まで引っ掻き回そうとするが、それも叶わず笑い声と共に其処から姿を消したのだった。




 「っ……」


 「「コウガ!!」


2人の姿が消えると共に倒れるコウガ。


その彼の元に駆け寄るレオン達は心配そうに様子を伺う。




 「……」


意識を失っているだけの様子の彼。


その姿に安心したのかホッと息を吐き胸をなで下ろす。



気が抜けたのか力無く座り込み、安堵からか涙を浮かべる。


仲間達が様々な態度を見せる中、意識を失うコウガはどこか幸せそうに笑っているように見えた。





ステンドグラスから差し込む日差し。


舞い込む爽やかで涼やかな風。


遠くから聞こえる小鳥達の歌声。



その全てが彼等の勝利を喜んだ。


血の涙を流す女神の像も彼等をそっと見守り、その幸せを願っているようだった。










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