Blood Tear
「ってて……仲が良いって、そんな筈が無いだろ!?俺とこいつは犬猿の仲。決して混ざり合う事の無い存在なんだよ!」
「…奇遇だな、私も同意見だ。お前とは一生かけても仲良くなれそうも無い。否、仲良くなる気など無い。が適切か……?」
「ちっ……」
解放され胡座をかくレオンは珍しく諺を使って表現するが、再度つっかかってきたクレアを睨み舌を打つ。
そんな2人の姿に何故か微笑むコウガ。
何時も喧嘩ばかりする仲の悪い2人に呆れるが、そんな姿でさえ今では微笑ましく、2人と共にこんな毎日を過ごしている事が嬉しく幸せなのだ。
「…何だよ……何か変な物でも食ったのか……?」
「……」
何が可笑しいのか分からないレオンは彼を不思議そうに見上げ、クレアは彼の微笑む姿を無言のままじっと見つめる。
「否、何でも……」
微笑むコウガは真意を述べずそう言うと歩き出し、2人はその後を追いついて行く。
あの日から3人で旅をしながら共に日々を過ごしているコウガ達。
時には先程のように喧嘩もするし、互いに笑い合ったりもする仲となった彼等。
共に信じ共に心を開く。
素の自分を見せる事の出来る唯一の存在。
この3人の絆はきっと、否、決して消える事は無い。
流れる雲の無い青空は何処までも広がり、障害物の無い彼等のこれからの道を示しているようだった。
崩れた教会からは鳴る筈の無いベルが鳴り、彼等の旅立ちを祝福する。
揺れる凛々しい花々の中、1人の女性は遠退く後ろ姿を見つめ、祈りを捧げながら静かに見送った。
Blood Tear 完