キミに出会えた確率
目が合うと女はニコっと微笑んだ。






心を惹きつける・・・そんな笑顔だった。




ドキン・・ドキン・・・





心臓が音を立てる。




こんな気持ちになったのは初めてだった。







でも恋に落ちたことのない俺は、この時一目惚れだ何て気づきもしなかった。







とりあえず名前を聞こうと思い、歩み寄ろうとした時・・・





一人の老人が乗車してきた。






杖をついていて、座れる席を探しているようだった。




でもあいにく席は空いていない。




座っている仕事帰りのサラリーマンは寝たフリ・・・



音楽を聴いている若者、見てみぬフリをするOL・・・




誰一人、席を空けようとする人は居なかった。





でも俺だって、そんなヤツらを怒鳴って席を空けさせてあげるほど優しいヤツじゃない。



席が空いたところで俺にはなんの得もねぇ。



だったらわざわざ面倒なことをする必要もねぇし。



この汚い世の中、ギブ&テイクだって思ってたから。


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