風に恋して:番外編
「リア、眠いんだろう?」
「うん……今日は、いつもより患者さんが多かったからかな」

うとうとし始めたリアに声を掛けると、リアは口に手を当ててあくびをした。

エンツォは立ち上がって、リアの手を取った。リアはそれに従って立ち上がる。

「ごめんね」

ドキッとする。

その言葉を言わなければいけないのは……エンツォの方だから。

「いいよ。おいで?」
「ん……」

エンツォに支えられながら、寝室のベッドに倒れこんだリアは薄っすらと目を開けてエンツォを見た。

「エンツォ……」
「うん?」

なかなか手を離そうとしないリアは、エンツォを見ているけれど……本当にその眼差しを受けるべき人間はここにはいなくて。

エンツォに恋をしている――させられている――リアは、エンツォがリアに触れようとしないことを、気にしている。

言葉にはしないけれど。

「疲れてるんだろう?おやすみ」

エンツォはそっとリアの頬にキスを落とした。
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