風に恋して:番外編
イヴァンが研究室で薬の在庫確認をしていると、くるくると風が吹いてきた。

『いー!』
「ルカ様、どうなされましたか?」

イヴァンが右手に風を起こしてやると、ルカは楽しそうに笑ってそれと戯れた。ルカはイヴァンによく懐いてくれている。彼がお腹にいた頃にリアに気を分けたのが理由のようだ。おそらく母親を助けたことで“味方”のように思われているのだろう。

「レオ様とリア様は?」
『ぱー?とー』

“とー”というのはセストのことだ。最後の文字の発音を真似ているらしい。つまり、レオはセストと公務に出ているようだ。

『まー、うぅぅ』
「なるほど」

イヴァンはフッと口元を緩めて自分の机に座った。

リアは疲れて眠ってしまっているらしい。慣れない子育ては大変だ。ルカ自身は構ってくれなくなった母親のもとから動くことができず、風をイヴァンのところまで吹かせてきたのだ。

どうやら在庫確認は夜にやらなければならないようだ。

「今日は何をして遊びましょうか」
『うー!』

イヴァンが笑うと、ルカも嬉しそうに声を上げた。
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