風に恋して:番外編
『もー!もー!』
ルカが桃の木の間を嬉しそうに吹き抜けていく。
イヴァンとルカは、城の庭の一角に設けられた桃の果樹園に来ていた。桃が大好きなルカのために作られた特別な場所だ。呪文によって温度管理をされていて、桃が絶えず生る。
イヴァンは管理人に頼んで熟れた桃を1つもらった。今日の夕食後にルカが食べるだろう。
実際には、食べるのは母親であるリアなのだけれど……
「まぁ、これだけ可愛ければ仕方がないか」
イヴァンはリアがいつも我慢して桃を食べていることを知っている。元々、桃は苦手だったらしいが、ルカがお腹にいたときはルカの意思が強かったのか、むしろ喜んで食べていた。だが、ルカが生まれると味覚もだんだん戻ってきたようで。
それでも、可愛い息子のために文句も言わずに食べるリアは若いながら良い母親である。
イヴァンはルカが桃を揺らすのをしばらく見つめていた。
賢くて、可愛くて……自慢の息子なのだろう。レオもリアも、城の皆が溺愛している。もちろん、イヴァンも。
「ルカ様、そろそろ――」
『まー!』
そう、城へ戻ろうと声を掛けたとき、ルカが『きゃはっ』と笑ってパチンと消えた。
リアが起きたのだろう。
懐いてくれているとは言っても、さすがに母親には勝てない。イヴァンはクスクスと笑いながら城へと歩き出した。
ルカが桃の木の間を嬉しそうに吹き抜けていく。
イヴァンとルカは、城の庭の一角に設けられた桃の果樹園に来ていた。桃が大好きなルカのために作られた特別な場所だ。呪文によって温度管理をされていて、桃が絶えず生る。
イヴァンは管理人に頼んで熟れた桃を1つもらった。今日の夕食後にルカが食べるだろう。
実際には、食べるのは母親であるリアなのだけれど……
「まぁ、これだけ可愛ければ仕方がないか」
イヴァンはリアがいつも我慢して桃を食べていることを知っている。元々、桃は苦手だったらしいが、ルカがお腹にいたときはルカの意思が強かったのか、むしろ喜んで食べていた。だが、ルカが生まれると味覚もだんだん戻ってきたようで。
それでも、可愛い息子のために文句も言わずに食べるリアは若いながら良い母親である。
イヴァンはルカが桃を揺らすのをしばらく見つめていた。
賢くて、可愛くて……自慢の息子なのだろう。レオもリアも、城の皆が溺愛している。もちろん、イヴァンも。
「ルカ様、そろそろ――」
『まー!』
そう、城へ戻ろうと声を掛けたとき、ルカが『きゃはっ』と笑ってパチンと消えた。
リアが起きたのだろう。
懐いてくれているとは言っても、さすがに母親には勝てない。イヴァンはクスクスと笑いながら城へと歩き出した。