風に恋して:番外編
レオは……考える時間もなく、リアの唇に自分のそれを重ねていた。

触れるだけ、けれど少し長いキス。

そっと唇を離してリアを見つめる。吐息のかかる距離。リアはぼんやりとレオを見つめ返していた。

「リア……っ、ごめ――」

レオがハッと我に返って謝ろうとしたとき、リアはふらりとレオの胸に倒れこむように眠ってしまったのだ。

レオは大きくため息をついた。

とても、複雑な気分だ。リアが意識を飛ばしてしまったのは、具合が悪いせいなのか、それともレオにキスされたことがショックだったからなのか。

リアが目を覚ましたとき、どうしたらいいのかも……

謝るのは変かもしれない。先ほどは咄嗟に口をついて出たけれど、レオはリアが好きだから。ずっと、触れたいという衝動を理性で抑えていた。それが、ふと緩んでしまった。

リアの、レオを呼ぶ声に。

軽い気持ちではない。ずっと、今まで我慢できたことが不思議なくらい強く、リアを想っている……今の状況は“きっかけ”であっただけ。

レオはもう1度ため息をついて、リアをベッドに横たえた。

今までリアが完全な力の解放をしたことがなかったからわからなかったけれど、赤い瞳の副作用は相当つらいもののようだ。見ていられないほどに……

レオはリアの額にキスを落とした。こんなことで、リアの苦しみが軽くなるわけではないけれど、そう願いを込めて。
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