風に恋して：番外編
『いー？なーな、うー？』

イヴァンにくるくる絡みつくように吹くルカがエレナとの間を行き来する。

「ルカってば……もう行くよ」
「うぅぅぅう！」

今度はリアに抱かれているルカがダダをこね始めた。

「ふふっ、ルカ様はイヴァンさんに遊んで欲しいみたいですよ」

エレナがリアに近づいてルカの顔を覗き込む。

「あー！」
「また大きくなりましたね。抱っこしてもいいですか？」
「うん」

リアはエレナにそっとルカを抱かせた。ルカは嬉しそうに声を上げている。イヴァンはそんなエレナを見て、胸にくすぶるものを感じた。

肩の辺りで揺れるダークブラウンの髪、ルカを優しい眼差しで見つめる少しだけ色素の薄い瞳。背は女性にしては高い方で、もう少し食べた方がいいのではないかと思うくらい細い。

化粧をしなくても目鼻立ちがハッキリしていて、頬も自然に健康的な色をして……美人、といわれる部類に入るだろう。

明るくて、素直で……非の打ち所がないくらいだ。

彼女が自分を慕う理由がよくわからない。

こんな一回りも年上の男でなくとも、エレナならもっと若くて良い男を捕まえることができるに違いない。
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