風に恋して:番外編
『いー、なーな、うー!』

先ほどからイヴァンとエレナを交互に呼ぶルカ。2人に遊んで欲しいのだろうか。

イヴァンはソファに座り、エレナも座るように促した。

「レオ様がいないから、風で遊んでくれる人が俺しかいないのかも」
「それだけ、懐かれてるんですよ」

イヴァンの言葉にエレナが笑う。

「光栄だ」

イヴァンもつられて笑って、ルカをエレナに抱かせ、右手に風を起こした。ルカが嬉しそうに風と戯れる。

「……イヴァンさんは、いいお父さんになりますね」
「え……?」

思わずエレナに視線を向けると、エレナはイヴァンとルカの風を微笑みながら見ていて。

ドキッとした。

エレナは確かに少し大人びた外見をしているし、精神的にも同い年の娘よりは落ち着いている。だが、母性……というのだろうか、そういうものを感じたのは初めてだ。というか、一回りも年下の娘にそんなものを感じるとは思ってもいなかった。

「その……こ、恋人、とか……いらっしゃらないんですか?」
「……いや、今は仕事が忙しいし」

言葉にしてから、言い訳のようなことを言ってしまったな、と思う。

(言い訳……?)

一体、何に対しての?
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