風に恋して:番外編
「エレナも、いいお母さんになりそうだよね。美人だから、モテるでしょ?彼氏はいないの?ディノがいつも心配してる」

早口で捲し立てる。自分は何を焦っているのだろうか……

『いぃぃ!』

すると、ルカがパチンと弾けてイヴァンの風を吹き飛ばしてしまった。ご機嫌を損ねてしまったようだ。だが、なぜ?

「ルカ様?」
『なーな、んー』

ルカの風はエレナの方へと吹き、ダークブラウンの髪をそっと揺らす。何か、慰めるように……

「エレナ……」

そこでようやく、エレナが泣いていることに気づいた。

「あ、いえ……ごめんなさい、ゴミが入ったかも――っ」

取り繕おうとするエレナの頬を伝う涙を親指で拭うと、エレナはビクッとした。

「ゴミが入った、っていう量じゃない」
「…………」

エレナは長いまつげを伏せて、黙り込んでしまった。イヴァンもどう声を掛けていいのかわからなくて、沈黙が流れる。

エレナを泣かせたのは自分だ。けれど、ここで慰めてしまったら期待を――
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